法人にするとどんな領収書でも経費になりますよね?

知人から法人関与の紹介があり、会ってみると司法書士から「法人にしたら何でも経費に出来るから法人で事業をした方が良い。」と言われ、法人を設立したとのことでした。
私もほとんどの節税本に目を通します。2~3年前から「すべての領収書は経費で落ちる」的な刺激的なタイトルの節税本が多く出版されているため誤った認識が広がらないか心配していました。これらの本は販売部数を伸ばすためにタイトルが刺激的になりがちです。
しかし、よく読むと「事業と関連があれば・・・」などの文言が混じっています。常識的に考えれば当たり前のことで税務署が事業とまったく関係のない経費を認める訳はありません。ただ、税務署もすべての法人に調査を実施できる訳でもなく、また、金額が僅少だからとお目こぼしをしているケースはあると思います。
これら節税本は、とにかく法人税等を減少させることに主眼を置いているため会社経営を網羅的に考えていないように感じます。例えば、中小零細企業が節税になるからと交際費や厚生費をバンバン使い、高額車両の購入を繰り返したらどうなるでしょうか。今の景気は、世界情勢の変化でいつリーマンショックのような状況になるか分かりません。そのようなとき会社及び社長個人の蓄えが乏しければ、一溜まりもありません。また、社員もそのようなお金の使い方に疑問を持つでしょう。
中小企業であれば利益1千万円に対する法人税等は、約30%程度の300万円です。留保資金は単純に考えると1,000万円ー300万円=700万円となります。100万円の無駄な経費を支出しても減る税金は30万円で留保資金は、900万円ー270万円=630万円となります。課税の繰り延べなどで将来資金を挽回できる節税であれば一考の余地はあります。
さて、この方に以下の説明をしたところ、どんな領収書でも経費と認めてくれる税理士事務所を探すということで契約には至りませんでした。

  1. 経費として認められのは、少なくとも事業と何らかの関連性のあるもの。
  2. 税理士法人としてもこのような事業とまったく関係のない経費を認める訳にはいかないこと。
  3. 税務調査があった場合、事業と関係のない支出は、役員賞与となり法人の経費としても否認され、かつ、源泉所得税の対象ともなる可能性があること。
  4. 消費税の課税仕入れも否認され、消費税の納税も生じること。
  5. 仮装であり悪質と認定された場合、重加算税の対象となる可能性もあること。
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